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相続税 広大地について

2009年9月30日 by Quality-F

相続税の評価における「広大地」の税務評価方法は、平成16年に大幅な改正があり、平成16年1月1日以降の相続等の評価から適用されている。改正前の評価方法は、戸建住宅地域内にある広大地を戸建住宅の敷地に開発造成する場合に生じる道路や公園等による、潰れ地を「開発想定図」を作成し、当該潰れ地等による減歩のみを考慮する形であった。したがって、これに係る造成費、開発負担金その他の費用は評価減に影響しない構成であった。

これについて、鑑定時価や物納資産の売却等により、時価との大きな相違が認識されて、平成16年の改正において、具体的な「開発想定図」の作成は必要とせず、また、造成費等の開発費用を織り込んだ簡単な数式により、対象地の面積に応じて簡単に評価額を算出できるようになった。しかし、その半面、評価対象地が広大地に該当するか否かで、評価額が大きく異なることから、その判定をめぐって問題が新たに発生している。なお、当該減価を加味した評価額は、行き過ぎともいわれている。

例) 住宅地域内に路線価20万円/㎡の1,000㎡の土地

通常評価…2億円

広大地評価…20万円/㎡ × 1,000㎡ ×広大地減価(55%) =1億1000万円

広大地減価率  0.6-{0.05 × 対象地面積(1,000㎡)/1,000㎡} = 55%

広大地~財産評価基本通達24-4《広大地の評価》

『その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法に規定しる開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地(道路等)の負担が必要と認められるもの(大規模工業用地とマンション適地を除く。以下「広大地」という。)の価格は、路線価地域に所在する場合には、その広大地に面する路線の路線価に、[0.6-{0.05×(広大地の地積÷1,000㎡)}の算式により求めた、広大地補正率を乗じて計算した価格に、その広大地の地積を乗じて計算した金額によって評価する』

※広大地による減価を行うと、土地の形状や接道状況(無道路等も)、崖地等の個性は考慮外

広大地評価規定は、あくまでも面積が大きくなることによる減価(以下、面大減価)を要する土地についての減価を評価に反映させるためのものと理解する。

面大減価とは、評価の基準となる標準的な画地の土地単価に比べて面積が広いことに起因して、その単価が下がることをいう。

具体的には、戸建分譲が最有効使用となる場合である。

デベロッパーが分譲素地を購入し、道路等の造成を行い、一定の経費や利益等を見込み、対象地を購入するためである。その際に、分譲総額から費用・利益等を控除したのちの価格が、購入相当額となる。その為、当然に対象地の価格は相場(標準的な画地等)より低位となる。

相続税評価の基準となる路線価が、一般的な住宅地域に対して設定する画地規模は200㎡程度であることから、その路線価の示す価格水準は戸建住宅用地を想定している(※1)。その為、当該標準的な規模より面積が大きくなれば、当然に単価は落ちる。ここで、注意すべきは、標準的規模に比べて、対象地の面積がどのくらい大きければ適用させるかどうかという点である。この点に関しては、土地の個性により、判断するしかないであろうが、目安については、H17年情報に記載されているとおり、開発許可を要する面積基準が妥当である(※2)。

同様に、地域の容積率についても300%以上の地域については、一般的には適用外と考えるべきであろう。いずれにせよ、近隣地域や標準地等の状況を踏まえて、マンション適地か否かと判断すべきである。

※1. ただし、近隣地域や類似地域の状況によっては、標準地や基準地等の公的な画地規模との検証が必要である。

※2. だだし、面積基準以下であったとしても、当然に面大評価が認められることから、大きな評価減が見込める土地については、鑑定時価や意見書の提示(面大地採用)で対応を図るべきであろう。

16年情報における「広大地に該当しない条件の例示」について

・     「既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地」

・     「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地(例えば、大規模店舗、ファミリーレストラン等)」

・     一体的に最有効利用(最有効使用)されている敷地かどうかで判断すべき

例)大都市郊外における敷地面積1,000㎡の土地上の賃貸アパート。

郊外における面大地の標準的使用に合致しているといえる状況もあると思う。

しかし、こうした賃貸アパート等は「遊ばしておいても仕方ないから」とか、「節税対策になるから」といったケースがほとんどである。したがって、このような土地の大半の本来の最有効使用は戸建住宅地の利用となると思われる。あくまで、土地代をゼロと考えてこその採算性・資金繰りである。しかし、そうはいっても、収益性が高い場合には賃貸マンション等としてのマンション適地に該当するケースもあろう。

いずれにせよ、収益性の如何によっては収益還元法等からも分析が必要である。

なお、有効利用に供することで、収益をあげているのだから評価減は不要との考えは成立する余地の無いものだといえる。家賃収入による有利性は所得課税の領域であるからである。

※税務員職員にとっての事実上のマニュアルでもある解説書:「平成20年版相続税贈与税・土地評価の実務:大蔵財務協会」では、「有効利用」と記載されていたものが、「最有効利用」との記載に改められている。

※そもそも土地の相続税評価は「更地としての評価」であって、その土地がどのように利用されているか、何が建てられているか等を無視した状況で評価すべきであろう。更地だと、広大地が適用されるものが、賃貸アパートを建てたことにより適用されないとの考察は不合理である。

・     「原則として容積率300以上の地域に所在する土地」

・     将来性等を加味すれば…三大都市圏では概ね妥当する。

・     しかし、例えば地方圏では商業地であればほとんど400%以上の指定がなされている状況を鑑みると妥当しない。

・     「公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められる土地」

例)ヨーカン切開発地 、 ミニ開発地(路地状敷地で可能との判例が…)

地域の開発状況を鑑みて、鑑定時価及び、専門家意見書で対応。

なお、H16年、H17年情報では、「マンション適地の判定については、戸建住宅とマンションが混在している地域(主として200%の地域)にあっては、その土地の最有効使用を判断することが困難な場合もあると考えられる。このような場合には、周囲の状況や専門家の意見等から判断して、明らかにマンション用地に適していると認められる土地を除き、戸建住宅用地として広大地の評価を適用することとして差し支えない」との記載。