100億円を超える大型取引、不動産投資の優良物件です。

100億円を超える大型取引

2009年7月5日 by Quality-F

ケネディクスのSPCがKDX豊洲グランスクエアを売却した。買主はカーライル・グループのSPC、価格は340億円程度の取引であった。カーライルは、大宮センタービル(2005年11月売却済み)、パワーセンター大津、ロックタウン大館西などの投資実績を有している。近年の不動産マーケット市場では、あまり話題になっていなかった。

KDX豊洲グランスクエアは2008年5月竣工、基準階面積1,550坪と都内でも最大級のオフィスビルである。ただし、豊洲駅と東雲駅の中間に位置し、徒歩10分以上と交通アクセスが非常に悪い。そのため、豊洲駅からは無料のシャトルバスが運行している。テナントは、第一貨物、 昭和リース、NTTデータ、リコーリース、日商エレクトロニクス、三菱UFJ証券、MUS情報システム等であり、バックオフィスニーズやデータセンターニーズを上手く吸引して、稼働率は現在約95%である。総貸付面積が14,791坪と特大規模であるにもかかわらず、竣工後1年足らずのリースアップ期間で安定化水準まで稼動させていることは驚きである。

有効面積単価が約2,300,000円/坪であることから、高い水準での取引ではない。賃料水準としては、現在@20,000円/坪で募集しているが、Aクラスで築浅、規模大とはいえ、豊洲で20,000円/坪の水準は現状非常に厳しい。東京都心部のいわゆるAクラスB立地のオフィスビルは、都心部のオフィス市況の影響に過敏に反応する。当該エリアは補完的なエリアであり、都心部に比べて相対的に賃料水準は低い、その為、バックオフィスや集約化ニーズ等の需要が見込める。しかし一方で、都心部の賃料水準が相対的に割安感が認められる状況(景気の回復期)では、当然に、割安感のある都心部に移転するなどの回帰サイクルをたどることとなる。

AクラスB立地の特徴についての追記でやや脱線したが、再度、賃料の検証に戻る。基準階1,550坪と特大規模であることから、仮に@15,000円/坪でフロア借りをしても月額2,300万円の賃料(共益費込み)となる。これだけの不動産経費を1箇所の事務所に支払うケースは、本社・支社機能として入居するケース以外ではあまり見受けられない。

豊洲駅周辺の大規模オフィス賃料相場としては、15,000~17,000円/坪程度であろうが、KDX豊洲グランスクエアは、駅からのアクセス面の悪さを考慮して、15,000円/坪程度の水準であろう。ただし、その中で大規模テナントについては、「長期フリーレント」・「定期借家契約」・「マーケットより割安な賃料」で入居しているものと推察される。B立地に入居する大規模テナント(集約・バックオフィス等)のニーズは貸室規模の特大化に伴い賃料総額が大きくなるため、「立地特性」より「賃料水準」を第一に指向しているからである。これらの事情を考慮するに標準化賃料を@13,000円/坪とし、経費率を仮に30%と想定すると、NCFキャップレートは4.8%となる。

物件取得しているファンドマネジャーと直近の取引水準について、先日情報交換した時の話である。「100億を越える物件については、利回り水準は思ったより上昇していないよ(物件価格はさほど下落していない):あんまり安くなってないよ…」とのことである。100億以上投資できるファンドや機関投資家は限定されるものの、高値(利回り水準が追いつかない状況)でない現在、入札を行ったとしても年金基金など3~5社程度は参加し、適正(妥当)な水準で指してくる。その結果、都心部の大規模オフィスならば4%台(NOIベース)での取引になってしまうとの事である。今回のKDX豊洲グランスクエアの取引水準(利回り)についても、当然に同様な結果となった。カーライルは、大宮センタービルの投資では2004年に100億で取得し、2005年に150億で売却した経緯があるが、今回1年後に取得価格の1.5倍で売却できることは難しいであろう。しかし、この水準であれば十分なキャッシュINが生じる、したがって、3年、5年先を見据えれば…。